vol.77 2005年 3月21日  『ゆったり暮らせば』 第49回

産経新聞 平成16年(2004年)3月18日 木曜日 12版 18頁
ゆったり暮らせば 第49回
〜ログハウスづくり〜
心の基礎が安らぎをカタチに


 トレーラーハウス暮らしも九年目に入りました。初め、「基礎がないなんて家じゃない」と人に笑われても「心に基礎があればいいんでなーい」と思っていた私ですが、さすがに勢いを増す雨漏りと二畳半一間暮らしには限界を感じ、敷地にログハウスを建てることにしました。二年前に仲間と改築した母屋のエコハウスがありますが、そちらは近い将来カフェにしたかったので住むわけにはいかず、昨年の夏に家づくりを開始。いつかログハウスをという構想は長かったので、漠然とした理想はありました。シンプルで、まきストーブの周りに人が語らうような・・・。

 知人を通してカナダのログ材輸入業者やログビルダーと知り合い、話はポンポンと進みます。設計士に自分のアイデアを伝え、図面も着々と決定。全額借金なので、その担保として土地も購入することになりました。一生に一度の楽しい家づくり・・・けれど私は不安の嵐の中にいました。

 仕事が立て込んでいた時期で時間がなく、業者さんとの話に食い違いが生じ始めたのです。早く建ってほしいものの、九月に伐採では乾燥時期が短いのでは? 建材はエコ? 地元材のハンドカットログが夢だったのに、外国材のマシンカット? 材の支払い日が迫り、いつもお世話になっている銀行に怖い顔して掛け合うのも、自分らしくありません。顔には険が表れ、なんだかギスギス。信頼できる人たちとわくわく夢を見ながら作り上げるあの母屋改築での感動はなく、ぷかぷかと不安の海に浮かぶばかり。しかも支払いを終えた材の到着は遅れ、いつ来るとも分からないとか。来ない、かも?

 ボタンを掛け違えていたのならばやり直そうと、昨年末、勇気を出して輸入業者さんとの縁を白紙に戻しました。材が日本に来たら、地元のログビルダーの人たちに建ててもらおうと奔走し、なんとか人づてに建て方も見つかりました。地獄に仏を見る思いの中で、あれこれ自分を見つめ直します。忙しいは言い訳にならず、家を造るための時間をもっとさいて、じっくり練るべきだったこと。誰も悪意の人はおらず、悪いのは「死ぬ気」で家造りに向かわなかったアタシだったこと。

 ある人が言いました。「どうしたいの? 魂のレベルでお互い話し合って作り上げていくの? それとも・・・」。言われてすぐに気づきます。私が作りたかったのは”安らぎの場所”の拠点であり、それをカタチにするためには、すべてにその魂のレベルが必要だったのです。納得した途端に、ガラーリと動きが変わりました。ログ基礎ができるまでは、すべて裏目に出たのに、次々と不可能が可能になっていくのです。心が基礎を作ることを、改めて知り、私は何かをつかんだ気がしました。

到着したコンテナからログ材を、大勢の仲間とともに運び込む山村さん。「この重みがうれしい!」=平成16年1月24日、静岡県富士宮市の自宅

 
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