2010年10月7日

■ 信越五岳トレイルランニングレース2010・アンビリなゴーーール!


  最終の第8エイドを出ると、すぐに登りでした。戸隠スキー場のてっぺん、瑪瑙山(1748m)まで一気にひたすら登ります。たった4キロ、されど4キロの辛かったこと。私の身体はゆっくりしか動かず、「好きな登り」は何処へいった!? 「力でないな。お腹に何か入れたほうがいいのかな」「ベスパ(速効に効く元気材)飲みたい」と思うのですが、止まってサイドポケットから出して食するという行動に移せない。遅いので、止まりたくなかったのもあるけれど、やっぱり疲れていたのかな。広い林道なので歩きやすいのに、「遅々として進まず」とはこのこと。山頂までは、スローな映画を観ているようだった。←ここでさっさと行けたらホンモノだなあ。朝霧のペーターは、電話で若ちゃんに「ここからが彼女の本領発揮ですよ」と言ったそうだが、なんとも身体が重いぃ。登りで後ろから来た人は一人だけ。その人もゆーーっくり。
 そして、ここでサブのハンドライトが突然消えました。「何で、こんな時に?」。早いのでおかしいなあと思ったけれど、予備の電池をザックに入れるのを忘れたので仕方ない(本当はただの接触ミス。戻って振ったらついたというお粗末な話でした)。ヘッドランプの電池をハンドに移し替えたかったけれど、それも時間がかかるので「う〜ん。行こう」。暗いヘッドライトだけになると、すべてはうすらぼんやりだったけれど、「まあ慣れるっしょ」。
 やっと辿り着いた山頂には、スタッフの明るい女性たちが待っていました。「ご苦労様で〜す(スタッフ)」「ここでこんな時間で、ゴール間に合うかしらね〜(礼子)」「ううううんーと。ギリギリでしょうか(ス)」「やっぱねえ(礼)」。あまりに遅かった登りに、愕然としちゃった私。でも、行くしかない。まだ何とか下れるアンヨはあるのだから頑張ろうと、スキー場の斜面をとにかく下った。この長い下りでは、かなりの人がすっ飛んで抜いて行きました。
 どこかで逢ったようなグループも、全開で降りて行きます。先導者が経験者のようで、大きな声で指示を送っています。思わず「間に合いますかね」と私。「大丈夫、私たちに着いてくれば間に合いますよ!さあ、着いてらっしゃい(元気な先導者)」「…」。有り難いけれど、そのスピードには着いて行けませんがな。女性たちを先導したグループのヘッドライトは、数分もしないうちに視界から消えました。みんな下り速いなあ。7年前にアドベンチャーレースをやっていた頃は、私も下りが大好きでしたが、思い切り体重が増加したのと運動不足で、とにかく膝の靭帯に一番負担がかかっちゃう。ので、遅い。そう、あれやこれや改善すべき課題は、本番でたくさん見つかりました。そんな感じで気持ちは急くけれど、確実に一歩一歩行くのみ。軽く登ったり下ったりを繰り返しながら、足場の悪いシングル道を急ぎます。

さあ、こちらは110キロのゴール地点。飯綱高原のハイランドホール飯綱です。 制限時間は、スタートから22時間後の3:30。この方はペーサーと一緒に、2:58ゴール♪ 恋人でしょうか。待ち続けた彼女の感動が伝わってきます。
3:00。あ、もしかしたら途中であった人たちかな? 「やったあ」「お疲れ!」の後ろからも、どんどんゴールのランナーが。 最後の一時間くらいは、目白押しで帰ってきたそうです(若ちゃん曰く)。
誰もが感動的。見ている方が泣けてきちゃう。 3:05。女性のペーサーと一緒にゴーール。 3:12。おお、もしかして声かけてくれた人方達かなあ。

 さて私も、ようやく目印だった給水ポイントにやってきました。手前の噂どおり、そこには、なんと石川弘樹さんの姿が!! 「きゃい〜〜〜ん! 石川さーん。間に合うかしら?」と尋ねると、一瞬時計を見てから、力強い言葉で彼は言ったのだった。「大丈夫! あと一時間ある。7キロだから、ジョグで走って行けば間に合うよ!」。「ここからはどんな道?」「いい道だよ。フラットでずっとこんな道だから!」「えええ、本当ですか?(じゃあ、大丈夫かも)」。そう、標高は変わらずに飯綱山を回り込む道なので、私は「行ってきまーす」と元気よく走り出したのでした。
 この広い林道、アスファルトからすぐにラフになったけれど、広くてなかなか走りやすい。10キロのいつものジョギングコースを思い出して、「あのペースで行けばいいんだ(楽勝♪)」と、ちょっと心が軽くなった。そして、すぐに雨。あっと言う間にかなりの土砂降りになってきたけれど、熱い肌には心地よく、そういう状況が好きな私は、急に元気になってきた。ちょっとすると、今度は後ろから車のヘッドライト。避けても抜かない。20秒ほどして抜いて行くと、石川さんのコレオスだった。「頑張って!」と言われて、う〜〜ん、走らぬ訳にはいかんやろー! 礼子頑張る。礼子叫ぶ。「大丈夫!大丈夫!大丈夫!」あ、これって、ラリーの砂丘越えと一緒かも。。。

3:12。どの顔も、本当に最高だあ〜っ。 3:17。いろんなドラマがあったんだろうなあ。 3:25。私の前に戻ってきた女性。あと男性が3人かいて…。

 「はあ」「はあ」「はあ」「はあ」。私の声のみが響き渡る真っ暗な林道は、アンリ・ルソーの世界だった。黒い山陰と、大粒の雨と、どんどん大きくなる水溜まりと、石ころの陰が、静寂の中で語りかけてきた。自然と不思議な一体感があって、なんだか気持ちいい(もちろん、苦しい)。ひたすら無心に身体を動かす。ただ、いつものランニングのペースと思っていたのに、ちょうど数キロ行った頃に軽い登りがやってきて、少しペースが落ちてしまった。。。時計を見ると、あと10分もない!「間に合わないかも?」と内心不安がよぎり始めた。う〜〜ん、思ったよりペースがあがってなかったのかも。ぶつけまくった足の親指が猛烈に痛いせいだろうか。疲れが限界なのだろうか。
 幾度かルートで出逢った3人の男性が追い付き、そして全開で抜いていった。「いかん、あのペースでないと間に合わない」。カウントダウンが鳴っていた。合わせたはずの私の時計では、「何秒か遅れる」感じ。でも、んなこと言ってられないので、走った。そして、1キロ手前? 何百メートルか手前だったろうか(記憶が?)、いくつかのポイントでスタッフがいて、声援を送ってくれていた。ここでは「無理かしら?」「うーん、間に合わないかも」という会話があり、びえーーーーん。ところがなんと、最後の最後、もうすでにゴールの灯りが見えている2カ所で聞こえてきた言葉は、「まだ、間に合う!」「大丈夫!イケル!」だった。内心、うそうそ、本当に?間に合うの??? 地獄から仏、蓮の花。今年一番のアンビリーバボー!! 私は、どこも苦しくなく、ダッシュした! 草の急斜面を下った向こうに、ゴールポストがハッキリと見えた。アナウンスで「ゆっくり! 濡れてて滑りますよ!」と聞こえるけれど、滑る気はまったくしなかった。110キロで一番速い走りで駆け降りると(一秒を争っていると思ってたからなー)、すぐに目に入った若ちゃん目掛けて飛び込んだ。21:58:36。石川さんのアドバイス、途中で声を掛けてくれたスタッフやゴールでのみんなの声援が、この何秒かを作ってくれたと思った。

花咲か爺さん、帰ってきたよ! 泣いたり笑ったり。ヘルプしてくれた面々がいて、それも嬉しかった。 「礼子さんらしいよ!」。チームターザンのポーリンもゲラゲラ。
あ〜あ。最後の7キロで浦島太郎にもなっちゃった。本当に「お疲れ」。 チームATCの原さんは、4分遅れで初完走。ご苦労様でした!! ★無断で掲載してしまったランナーのみなさん、お許し下さい。あまりにキラキラしていたので!
【Top Page】

Copyright 2001 Fairy Tale, Inc. All rights reserved.