2003年12月3日 ■ メダルへの道(なんちゃって・その2)

「セルフディスカバリー in 屋久島」レーススタート!!

 いよいよ今年最後のアドベンチャーレース、「セルフディスカバリー in 屋久島」が始まります。当日、3〜4時間という睡眠不足、そして前日、美味しさのあまり夕食を食べ過ぎたせいか、出るものが出ません。「私も」、「私も」と二人。”レースとは、重荷を背負ってゆくがごとし”なんてイヤだあ〜〜〜〜、軽量化したい。でもそんなことを言ってる暇はありません。緊張で胃がキリキリした伊豆アドのスタート前よりは遙かに気分は楽なので、「動けば出るかな」くらいのノリでスタートラインに並びました。あたりはまだ闇の色を残しています。

 6時のスタート直前、恋人と歩いたらいい雰囲気の朝焼けなのになあなんて思いながら、最前列に並びました。実はこれ、見たこともない最速トレイルランナーたちの走りを少しでも見たかったから。前回の長谷川カップでは遠慮気味に最後尾に近いあたりからスタートしたら、追い越すのに膨大なパワーを使ってしまい大後悔だったのです。この図々しさのお陰で、橋を渡り終えて左へ曲がったところにある最初の登りで、トップチームたちの階段一気登りを見ることが出来ました。世界を舞台に活躍している石川弘樹さんや佐藤佳幸さんや桜井美恵さんが大股3歩で駆け登ったところを、自分は・・・20回ほどちょこまか足を動かしたかな。人間じゃないっすよ、あの人たち。「それにしても格好いいなあ!」。

 気持ちのいい走りを目にしたからか、苦手なロードもまったく苦しくありません。ほどほどのペースで3人は進みます。登りになって、ちょっとペースを落とします。「温存、温存」という言葉が、今回チーム内で幾度も飛び交いました。最後のカヤック、そしてアイアンレーサー麻里ちゃんが一人で担当することになっていた最後の18キロロードランの力を、絶対に残しておかねばならないからです。「まわりのペースは気にしないようにしようね」。ペースの配分を一番把握しているのは、やはりレース経験豊富な麻里ちゃんなので、彼女の声に速度を合わせます。競歩のようなスピードですが、私たちは速度に関係なくいつもぺらぺらメイト。なんだかいろんなことをゲラゲラ笑いながら喋っています。レースのこともあるけれど、それ以外のことが圧倒的に多く、ガツッ、ガツッとコンクリートを叩く私の2本のストックの音もやけにうるさい。”アイアンスピリッツ”は鉄鍋のように賑やかなのでした。



スタートに向かうチームターザン、やるって感じでしょ。左より「アゲイン」の片山さんと鈴木くん。「プロテイン」の山下くんと萩ちゃん(伊豆アドのサポートさん。いつもは八ヶ岳の山小屋にいるせいか、いつも短パン)。


最後のセクションで使用するカヤックの前で、ゴール目指してGo!の雄叫び。 若干1名試験のため不参加なので、14名のエントリーです。平均年齢は、29歳。私と48歳のタック杉山さんでぐぐっとあげていま〜す。


チームメイトの由花ちゃんは、元競技エアロビクスの選手。今回、起きてすぐに当時の「盛り上げ曲」をウォークマンで聴いて絶好調♪ 「ホルモンDX」の熊原さんは、仙骨骨折のままグアムのレースを走った強靱な精神と肉体の持ち主。 今月号の「ターザン」読んでね!
 それにしても、今回のレースはなんだかとっても不思議でした。前半のロードで抜いたり抜かれたりがあっても「別に」という感じで、”妙な焦り”や”抜いた時の快感意味のないウヒヒ”がないのです。ほんとうに淡々と自分達の走りを守りつつ楽しんでいました。景色への感嘆符は、今までの山登りで最高量だったかもしれません。途中、朝日が回りの山頂を照らすと「うわ〜〜〜っ、見て!」。見たこともないような朱色の落葉を踏んでは「信じられない色だあ〜」。大きなビルほどもある滝がずごごごっと現れては「何なの、こんなの見たことない」。ヤクシカが現れては「ラッキーありがとう!」。神さまの島だなあと思わされる光景に、幾度あったでしょうか。山肌も空も水音も鳥の囀りもみんな絵画のように出来過ぎています。これほどの数の大杉を目の当たりにしたのも初めてでした。触れるのが可能な時は、「パワーちょうだ〜〜い」といって、そっと触れさせてもらいました。拝んだり、叫んだり、触ったり。それらを身体の芯から感じることのできる幸福なこの状況。これが幸せでなくて何なのでしょう。水晶のような沢水も、はいつくばってどれほど呑んだか分かりません。まろやかで甘いのですが、毎回微妙に違う味がしました。


屋久島っていろんな表情があるのですが、どこも山々が輝いていて綺麗だったなあ。私のチームはカメラを持っていなかったので、「アンビシャス」のタック杉山さんよりたくさん写真を拝借しました。
 あまりに楽しいので、ラッタラッタラー♪と順調なペースで進みます。「ターザン」のスタッフなど知っている顔に逢えるチェックポイントでは更に声のトーンがあがりますが、じゃあねと別れてからも私たちのうるささは余り変わりません。途中までなんとなく私が先頭を行っていましたが、カメラマンを発見すると、「おっ、先頭同じじゃつまらないから代わろう」。またまたいると「またまた代わろう」と遊ぶ私たち。そんな余裕があったら先にお進み!と言われそうですが、実はけっこういいペースでした。途中で二股の右コースから来ていた強者『とれとれ東龍門』と合流。「え、私たちの方が先に行ってたのん?」。聞けばチームターザンの熊さんと藤田さんチーム『ホルモンDX』が迷って逆走してしまっているらしい。ということは、彼らよりも先になってしまったのん? ということは先に行っているチームターザンは、15分ほど先に行ったというタックさん、阿部ちゃん、幸恵ちゃんの『アンビシャス』のみ? 戦わないといいつつも、なんだかムラムラくる3人でした。


 9時40分。屋久杉まで延々と続くトロッコ線路を行くと、やっとステージ1のゴールがありましたが、そこには『アンビシャス』の姿はありませんでした。替わりに観光登山客がどっさりこん。毎年増えているとは聞いていたけれど、ちょっとというか・・・かなりびっくりでした。でもみんな女性だけのチームと分かると、びっくりして「おお、がんばれや〜」と一段と大きな声で励ましてくれました。私たちはずっとそれできているので、もう女性だけということにすっかり慣れてしまっているのですが、回りからは珍しく見えるのでしょう(でも女らしいかどうかは???ですが)。
 15分の休憩で、麻里ちゃんは夜中に熱湯掛けて造り上げた「お赤飯のおにぎり」、私は前日スーパーマーケットで仕入れた大型の「山菜お稲荷さん」と「鮭のおにぎり」を頬張ります。美味い! これだけ歩くとやっぱりお腹に溜まるものが欲しくなります。伊豆アドでもおにぎり系に拘った私たちは、じっくりと食を楽しんで再スタートしました(細身の身体に合わないほど食べまくる由花ちゃんは、途中でちょこちょこ食べていたらしくゼリーとドラ焼き!)。と・こ・ろ・が・・・あたた。休憩が長すぎたのか、登り急勾配の人口階段が苦しくてなりません。由花ちゃんはすいすい行きますが、私は太股に乳酸が溜まってしまい、思うように足が上がってくれません。感覚に合わないピッチのところに来ると、それを察した麻里ちゃんが、後ろから一本の指で背中を押してくれます。「これだけなのに楽になるんだよね〜」と余裕のサポート。いつも麻里ちゃんは、手を出しすぎず、かといって放っておかずに、気持ちのいい助けをしてくれます。なかなか出来ることではないよなあと感心してしまいます・・・ああ、しかしこの階段は私にとっては地獄以外の何ものでもないっす。運動不足を嘆きつつ、でも現れるウィルソン株や屋久杉に一瞬の感嘆符を投げかけて進みました。登山客がゼッケンを見て道を譲ってくれるけれど、「私、アナタたちより遅いかもしれないのに。ゴメンね」と心で思いながら進みました。

 さて、チェックポイントの高塚小屋まではかなり順調だったのですが、そこから先のルートで例のものがじわじわと襲ってきました。左膝の靱帯がシクシクと痛み出したのです。前半はかばっていたので大丈夫だったのですが、やはりこの距離には勝てません。長谷川カップの時と似た展開です。左をかばっているうちに右も痛くなって、そのうちストックに全体重を掛けて下ることに・・・ああ、いや〜〜ん。もうあの苦しみはいや〜〜ん。でも登りは平気なのに下りがNGというのもまったく同じでゾオッ。「あと7時間よ。もうちょっとだから頑張ってね、お膝さん♪」と誤魔化しつつ進みます。それにしても大きな獣道のようなこのルートに入ってから、もののけに憑かれたのか、先を行く由花ちゃんの様子が変です。10〜20メートルほど離れているのですが、歌ったり、お喋りとしたり、ひゃらひゃら笑っているように聞こえます。それも2,3人いるかのように。「あ、ふえちゃぽーん。きゃらばおい〜あぇいいいどはは〜。さーばれあっぱたりっと♪」・・・私と麻里ちゃんは???? 由花ちゃん、とうとうねえ。でも自然が好きな人だったからねえ。惜しい人をねえ。追いついて「でーじょーぶでっか?」と聞くと、「あはは、私ミスコースしちゃうから、テープ見つけると嬉しくて、”あったあ〜っ”て叫んでたんだよ」ですと。でもそれを聞いてからまた離れると、「あ、ふえちゃぽーん。きゃらばおい〜」にどうしても聞こえてきてコワカッタ。



まだまだ暗い川沿いの道。こういう沢が山のように出てくるので、水筒いらず(でも1.5リットルは背負ってます)。先頭は由花ちゃん、真ん中に麻里ちゃん。おしゃべり隊は元気いっぱい。
屋久杉とオカンこと松田幸恵ちゃん。21歳の日体大生で一番の若さ! しっかし観光していたのね、 「アンビシャス」の面々は。ターザンのトップチーム、余裕ありすぎだす。


こんな光のシャワーをずっと浴びて歩くなんて、ほんとうに幸せなこと。歩くたびに力が湧いてきます。


ステージ2の終わりでぱくつく「プロテイン」の伊藤尚子ちゃん。盛岡市在住で一番遠いターザンメンバー。23歳! MTBの下りは弾丸級で、10月の里山アドベンチャーでは野猿のようだったとか。
 さてさて下りがどどどっと増えてきたあたりで、町の企画調整課のスタッフが追いついてきました。軽装ですが、最後尾から選手ゴボウ抜きしてここまでやってきたそうです。ステージ3のゴールまで後ろにいてくださったのですが、軽い足取りにぶっ飛びました。やはり地元は強いし慣れていらっしゃる。その人から30分ほど遅れて片山さん、鈴木くん、ポーリンの『アゲイン』がいるらしいと聞き、「あちゃーっ」と思う私たち。何かあったのか今回は飛ばしていないけれど、伊豆アドで9位だった彼らのパワーは底なしなのです。きっとエンジンがかかってしまったのでしょう。けれど、そのころ既に私だけではなく、最後尾を守ってくれていた麻里ちゃんの膝にも異常が出ていました。「痛いなあ」とぽそっ。でも鉄人が声にする時は、けっこう来ている時に違いありません。「私、遅い?(レイコ)」「ううん、私もそれくらいしか出せない(麻里)」「イテッ」「アタタッ」。イテテの合唱が続きます。由花ちゃんは相変わらず「あ、ふえちゃぽーん。きゃらばおい〜」なので、3人の雄叫びを聞いていた役場のお方は、本当に気持ち悪かったとお察しいたします(物見遊山だったかも?)。


ステージ3への着替えが終わって、いよいよ出発の「アイアンスピリッツ」。やる気満々。しかし身体は・・・。
 ああ、それにしても痛みは増すばかりです。つかの間の登りはいいのですが、下りは限りなくゆっくりになってしまいます。そしてやっとやっと森を出たと思ったら、ラフな舗装路の下りだあ〜。これが一番膝に来る私ですが、泣きながら早歩き。後ろ向きに走った方がよほど楽だわい。「死ぬ気って痛いよーっ」。編集部の大場さんがいたのでステージ2のゴールかなあと思ったら、写真ポイントでガクリ。でも励まされてスピードアップ! 走っても走ってもリバーの出発点が見えて来ず、やけくそになったころにターザンのライター内坂さんの姿を発見。13時35分、本物のステージ3ゴールに到着したのでした。ふう!


 
 次回はいよいよ涙のゴール編でーす!
次へ(2003年12月5日)
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