vol.81 2009年 6月3日  『お遍路と静岡』

 静岡マガジン社から出されている「Sizo:ka(しぞーか)」は、”静岡県だけではもったいない!”と、いつも思う素晴らしい季刊の冊子です。デザイン&レイアウトはもちろん、行きたいお店や逢いたい人、そして知り合いもけっこう出てきたりして、とにかく読み物としてものすごくクオリティー高く、すてきな雑誌です。640円も惜しくないよーっ♪ で、嬉しいことに、この「Sizo:ka」の記念すべき第1号から書かせていただいているのです! 4号までは、とある1週間の日記。その後は、春夏秋冬に分けた定番シリーズ。そして今は、日記風の朝霧日記。2009年の3月号(8号)では、タイムリーなお遍路日記を書いてみました。

静岡マガジン社 Sizo:ka 2009/3月号 No.8
「お遍路と静岡」

 私にとって「旅」とは、切っても切れない縁のもの。"あんころ餅に、餡がなければ只の餅"と同じように、私に旅がなければ、只の女。それもよく食べるぐーたら女。生まれてから、たぶんすぐに旅していた(と、母が言っていた)私ですが、ここ最近はま〜〜ったく家を出ていませんでした。だって馬に山羊に犬3頭にetcとなれば、限られた日数しか出られません。出張の時も、楽しいけれど心配なのが、正直な気持ちでした。ここに居れば自然は四季折々楽しめるし、友達は来てくれるし、畑にでれば食べ物あるし、テレビがあれば旅行も出た気になれるし…。
 ところが2009年になった途端、神様の掲示がありました。「行って来い!!」それは、神様ではなく、「動物の面倒見ちゃる。行ってこい」というパートナーの声。やっほーーーっ♪ きっと顔に書いてあったのでしょう。そういえば「四国八十八ケ所巡り、行きたいなあ」と口癖のように言ってたかも。思い立ったが(お許し出たのが?)吉日。私はスケジュールを立て、農閑期&カフェが暇なこの2月、家を後にしました。
 実は、2000年に一度巡ったことがありました。バイクで高知県の28番の大日寺まで走ったのですが、そこからは何故かぷっつり。その続きは自転車で回ろうと思っていたのですが、「行ける!」となったら、猛烈に歩きたくなってしまったのです。夢は"世界を歩く"と掲げている私(言うのはタダ)、やはりこの足で行きませう。もちろん一気に千百キロ余りは無理なので、数回に分けて気長にね。

 2月5日、静岡市での仕事を終えて、そのまま私は徳島の一番寺に向かいました。参拝グッズを揃え、7キロほどのザックを背負い、とことことことこ。気温16度という日もあり、さすが四国やなーと感心しながら、お寺を廻りました。遍路マップというのがあり、かつて弘法大師(空海)が通ったという道、遍路の休憩所、お勧めの宿泊所などが親切に記されています。道にも可愛い遍路マークのステッカーや道標がたくさんあって、実にオリエンテーリングっぽい。それがある一区間だけでなく、四国中にあるというのだから凄い!

 一日目の夜中は、さすがに足が重くて唸って寝てました。それでも今回は、静岡市のリフレクソロジーのお店で、足裏マッサージの基本を教わって来たので、毎日一時間ほど自分で揉むと、効果はてきめん! およそ一日30キロ、多い時は50キロほど歩きましたが、へっちゃらでした(着いたらヨロヨロしているのですが、朝にはシャキーーーン)。

 そもそも、何故お遍路さん?とよく言われます。「歩くの好き」「長いの好き」「自然が好き」「人が好き」「苦しいの好き」「祈るの大好き」「空海大好き」と、いろいろありますが、私の父親の故郷が愛媛県伊予市だということ、何故かバイクの知り合いがたくさんいること、そして暖かいからというのもあるでしょう。静岡も温暖ですが、ここ朝霧は北海道並みの寒さなので、ちょっとだけ"逃げた"のもありまーす。へへへ。

 それにしても、19歳の時に日本一周ツーリングをした時に見かけたお遍路さん。自分がなるとは思ってみなかったけれど、行ってみれば、こんなに自分に合っている旅はなかったかも。誰もが最初は急ぐものですが(先は長いので)、だんだんと緩むところも分かってきます。急いで終えて結願すればよいというものでもないしね。で、「わー、素敵なお店」「わー、可愛い花」「わー、こんなところあったんだ」「わー、ありがとう」と足が止まり、日に日に進まなくなっていきました。時間制限がないと、私ってこんなになってしまうのね。

 いろいろ分かってきたこと。四国巡りで"必ず受けとるよ"と言われていた"お接待"とは、本当に何処でも誰からでも、「えーーっ」というタイミングでやってくる贈り物ということ。「大変だね。これ、お接待させてね」と、ポンカン、文旦、お菓子、蒸かしイモ、干し柿、味噌、お金(百円玉とか)と、数え切れません。7キロが、たいてい2キロは増えていて、私は悟った。下着やシャツを減らし、マグライトを軽量にし、財布を安物に替え(高いのも持ってなけど)、歯磨きチューブや日焼け止めクリームを小さなケースに入れて少しでも歩きやすくと思っているのに、いきなりポンカン20個! そう、軽くて楽な状態ではなく、負荷があることが真実なのだ、、、と悟りました。

 道についてもいろいろ感じること多し。道子という名前をつけてもらった姉が羨ましいほど道が好きな私ですが、車のための道路はやはり足には負担で、かつて遍路道が通った山道に入ると喜びの声があがりました。「ふわふわ!気持ちいい!」。舗装路に出ると、山からの枯れ葉が積もった端っこを歩くお遍路が多く、「やっぱりみんな辛いんだ」と思ったり。でも、そんな時でも癒されるのは、日本の自然の素晴らしさ。ちょうど梅や桜が咲き始めたころだったのですが、香りと美しさにはうっとり、元気百倍。木々の木漏れ日、水平線の太陽、そして民家の暮らしを垣間見ているだけで、足が動いてゆきます。素敵な生き方をしている人と出逢った時も。

 さて、今や車で廻る方が圧倒的に多いお遍路ですが、歩いて廻る方もけっこういます。私が出た日にスタートした人は約十人。これが桜や枯葉の季節になると、もっと増えるそうです。私は民宿などに泊まっていましたが、野宿の歩き遍路もかなり遭遇しました。とにかくどの方法の遍路も、みなさん延々と歩いていて、私のように友人宅で宴会やっている人はあまり見かけなかったかも。

 で、実は一番びっくりしたのは、祈りながら歩いていると、不思議なことにたくさん遭遇すること。「あそこで○○をしたから、この人に会えた」ということは数え切れず、とうとう我が家の家族からも「病気が消えた」との連絡が。「ひょえーーーっ」は、みなさん経験するようで、民宿でもそんな話で盛り上がりました。

 さて、2回行って、現在の距離は400キロ。高知の30番寺からまだまだ長い道が続きますが、時間を見つけて、また行って参ります。体重は6キロ増えたけれど、体脂肪は4ポイントも下がったしね。しかし聞くところによると、静岡にも33番のお寺を廻る巡拝のルートがあるとか。知らなかったよ〜! 私の次の目標はそれかしらん!?

 
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